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ヨーロッパの農家、消費者、環境活動家
遺伝子組み換え種子汚染に関して政治に圧力
クロップチョイス誌編集長 ロバート・シューベルト
2002年10月14日、クロップチョイス・ニュース:
10月14日、何百万人という人を代表して、300以上のヨーロッパの農家、環境保護団体および消費者団体が、遺伝子汚染された種子についての懸念をルクセンブルグに持ち込んだ。ルクセンブルクではEU各国の農相たちが遺伝子組み換え食品の表示とトレーサビリティ(追跡可能性)に関して提出されている法案をめぐって、さらなる議論をするために会合を現在行っている。環境相たちは10月17日木曜日にその議題を取り上げる予定だ。
セーブ・アワ・シーズ・イニシアチブは、フランツ・フィシュラーEU農業委員と、消費者保護を監督するデビッド・バーンEU保健・消費者保護委員に陳情書を届けた。現在、「種子に関する指令」の改正案が提出されており、それが認められると、現在よりもさらに遺伝子組み換え成分の多い種子が「遺伝子組み換え」の表示なしで販売されることになるため、その改正案の変更を陳情書は求めている。改正案では、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)遺伝子検査について以下の基準値を認めている。
- 菜種は0.3%まで
- トウモロコシ、ビートじゃがいも、トマトおよび綿花は0.5%まで
- 大豆は0.7%まで
種を守るための活動をしているセーブ・アワ・シーズ・イニシアチブによると、もしも改正案が承認され、現在の基準値(全ての種子に関して0.1%)が変更されると、農家は何百万という遺伝子組み換えトウモロコシと菜種を不本意ながら栽培するという可能性も出てくる。そうなると、その野菜は慣行農法およびオーガニック農法の種々の野菜と交配し、汚染はヨーロッパ全土の農場および食糧供給システムの中に広がることになる。この指令が認められれば、「遺伝子組み換え成分が0.5%以上の場合、全ての食品にその表示をする」というヨーロッパ議会の法案は形骸化するとセーブ・アワ・シーズ・イニシアチブのベネディクト・ハーリン理事は言う。
ルクセンブルグの酪農家であるアロイーズ・マークスさんも同意見だ。「ヨーロッパの消費者は遺伝子組み換え作物を全く必要としていない。だから、農業従事者は、遺伝子組み換え作物でないことを保証しなければならない。」とマークスさんは言う。マークス氏は、トウモロコシと草と小麦で育てられた牛40頭で年間318キロリットルの牛乳を生産する。「もし買う種子に遺伝子組み換え成分が入っていれば、消費者に安全性を保証することはできなくなる。」
マークスさんは「種子に関する指令」の内容を変更し、現行の0.1%の基準値(PCR検査値の0%−実際の検査では限界がある)が法律となることも望んでいる。企業は過去4年間この基準を満たしてきており、その間EUは新しい遺伝子組み換え食物全般に関して一時停止措置を続けている。
この事は、オーストリアでは全くの常識以前の話である。種子の汚染ゼロということが、
2002年の初めに法律で定められている。巨大種子会社のパイオニア・ハイブレッド社はその法律に以前から従っている。パイオニア・ハイブレッド社オーストリア支店長は2002年3月にフォラルベルグ州政府へ書簡を送り、トウモロコシ全品種について汚染に関する検査を行い、結果は陰性であったと報告している。
ブリュッセルにあるパイオニア社の広報は「しかし全ては規模の問題。オーストリアにおけるわずか10万ヘクタールくらいの畑のトウモロコシに対して今の基準を満たすことはできても、ヨーロッパ大陸全土にわたって同じことをするのはほとんど不可能だ。」と述べている。
セーブ・アワ・シーズ・イニシアチブのデーターとは異なるが、EU内では、280万ヘクタールを越える土地で菜種が、そして440万ヘクタールを超える土地でトウモロコシが栽培されている。
しかし0.1%という基準が法律として成文化されなければオーストリアでの成功も終わりを告げるだろう。「たとえこの産業界が自分たちの生産物について惨めにも誰一人納得させることができなくても、EU委員会は遺伝子操作を行う企業に対し、ヨーロッパ農業を汚染する資格を与えるだろう。」とセーブ・アワ・シーズ・イニシアチブのハ―リン理事は言う。「これは遺伝子組み換え食物と種子に反対する全ヨーロッパの7割の消費者と農家に対する侮辱だ。国家の枠を越えたバイオテクノロジー企業数社の利益の代償として、ヨーロッパの農家、食品加工業者および小売業者の何百万ユーロというお金が費やされることになるだろう。」
もし種子の検査責任が農家に移されると、酪農家のマークスさんは種一回分につきおよそ1,000ドル相当を支払わなければならなくなるという。「それは高くつき過ぎるし、得な話ではない。」と彼は言う。
アメリカ合衆国のオーガニック農家デビッド・ベッターさんは、種子の遺伝子検査の基準値をできるだけ低く保つようヨーロッパの政治家に強く要求している。彼にとっては、農家が自分たちの種子の貯蔵管理を続けることができるどうかが一番の関心事である。
「もしこのまま我慢を続けたら、徐々に高レベルの汚染への扉を開けることになる。これにより農家は汚染の検査をしなければならなくなるだろうから、さらに負担がかかるだろう。バイオテクノロジー企業は遺伝子組み換え種子に関する特許を持っているので、ますます主導権をもつことになる。」とベッターさんは言う。
フィシュラーEU農業委員は種子に関する陳情書に対して理解を示したとハーリン理事は言う。フィシュラー委員は「この問題についてEU議会と話し合うことを望んでいる。また、遺伝子組み換え作物による汚染は小規模農家にとって本当に重要な問題だ。」と語ったという。
この件については、フィシュラー委員あるいはバーン委員の事務所、モンサント社の広報からのコメントを求めることはできなかった。
2002年10月のニュース
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関連性は未解明だが、普通に使われている農薬が池、地下水に流れ込み、野生生物や人間に害を与えている可能性がある。
2002年10月15日 フランスー新開発の遺伝子組み換え作物禁止令を続行
遺伝子組み換え製品に対する明確な表示規則が効力を発するまで、遺伝子組み換え作物の新開発に関してEUの法的禁止措置を解除することには反対だと、フランス政府は繰り返している。
2002年10月14日 オーガニック農業から小規模農家が去っていく
長年オーガニック農業をしてきた人たちと話をすると、驚くほど多くの人が自分たちの農作物をオーガニックと呼ばないことに決めてしまったことがわかる。政府の定める表示をするには、金銭的にも、管理上も、理念を理解する上においても農家の負担はとても大きい。
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遺伝子組み換え種子汚染に関して政治に圧力
10月14日、何百万人という人を代表して、300以上のヨーロッパの農家、環境保護団体および消費者団体が、遺伝子汚染された種子についての懸念をルクセンブルグに持ち込んだ。ルクセンブルクではEU各国の農相たちが遺伝子組み換え食品の表示とトレーサビリティ(追跡可能性)に関して提出されている法案をめぐって、さらなる議論をするために会合を現在行っている。
2002年10月10日 遺伝子組み換え食品
政策投票の内容がFDA(米国食品医薬局)の怒りを買う
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2002年10月10日 農家・環境保護者、USDA(米国農務省)に
カビの生えたトウモロコシの市場流通封鎖を要求
合衆国中西部の農家と環境保護団体は、アン・ベネマン農務長官に対してガーストシード社が製造するある種のトウモロコシの市場流通一時中止を求めている。このトウモロコシは有毒性のカビを含有しており、中西部諸州の豚および牛に不妊症を引き起こすおそれがあるとされているため、現在検査を行っており、その結果がでるまで待つよう彼らは要求している。
2002年10月9日 企業経営責任者(CEO)報酬の不均衡
農業分野にまで拡大
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